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執筆者の写真Tetuya Futigami

全ては熔けゆくAYTF Team JAPAN「MELT AWAY」レビュー(2)





前編に引き続き、タイランドのチェンマイで開催されるアジアンユースシアターフェスティバルに参加する五人の若きアーティストの記事、後編はインタビューをお届けします。



――まずは、昨年のAYTFに参加した平松さんと、三嶋さんに去年の感想からお聞きしましょう。日本ではなかなかできない経験をされたと思うのですが、一番感じたのはどんなことですか?

平松「演劇に元々興味があって、僕は大学時代から国際交流をやっていて、その両方が同時に叶えられるっていう、本当にやりたかったことができたんです。ただ本当に色んな意味でレベルが高くて大変だった。ワークショップが大変で、さらに英語で言われるので、何をしてほしいのか、ついていくのが大変でした。本当にスタミナがいりました」

三嶋「私はずっと海外で踊ることに憧れていて、大学で舞踊を専攻してて、卒業した時をきっかけに、(演出家の田村)花預さんからお話しをいただいて、AYTFに去年初めて参加することになって、すごい新鮮でした。日本でやるときと、歓声や反応が全然違う。海外の人はすごい反応がダイレクトですぐ声を出したりします。日本では声を出すとかはあんまり無くて、最後のブラボーとかはあるんですけど、海外では出てきただけで歓声が上がって、それが新鮮ですごい嬉しかった。それが経験できて、また次もやりたいと思いました。あとは他の国の人達ってすごい、自分たちの国の文化とかを持ってます。私らは自分らの国のことを全然知らんなっていうのを感じました。説明する時に自分の国の踊りとかそういうのを伝えられへんなってすごい思ったから、世界に行くよりも先に自分の国のことを知らなあかんなっていうのはすごい感じました」



▲平松隆壱(ひらまつりゅういち)さん。AYTF参加は2回目になります。



――では、そんなAYTFのことを聞いて、どんな期待とかを持ちました? 畑さんと川﨑さん。

畑「僕は大学で創作ダンスを学んでいて、すごいダンスが好きで、このAYTFは演劇ということで、演劇ができることによって、ダンスのレベルアップができるかな? という風に思ってます」

――今、これだけの作品を作って、ダンスのレベルはあがったと感じますか?

畑「そうですね。ほぼ即興で踊っているんですけど、やっぱりレパートリーというのはすごい増えたと思いますし、プラスアルファで感情とか演技を、すごい難しいことは英語で話しながらやっていることですが、いい経験だな、自分の成長につながるなと思ってて、そこがいつもとは違います」

川﨑「私、表現することが好きになったというか。最初、秋っていう配役をいただいたときに、秋に感情移入できるかっていうのを自分ですごく考えていて、最初は季節って景色とか匂いとかはあると思うんですけど、感情乗せるってなったら、本当にすごく難しいなって思っていたんですけど、何回も何回も重ねているうちに、花預さんたちが「色気やで」って言ってくださって、秋って誘惑する季節じゃないですけど、そういう面もあるのかなっていうのをすごく感じて、どんどん秋の感情になってきて、しっとりしたすぐ消え去って寂しい季節ではあるんですけど、その面ですごく感情に出てきたというのがあります。ダンスをするだけじゃなくて、(畑)有飛も言ってたんですけど、セリフがつくってなると、ダンスと演劇の違いというのをすごく自分で感じていて、たとえばダンスは自分の思ったままを表現した踊りになるんですけど、それにプラスセリフがつくとセリフに感情を乗せて体を動かしていかないといけないので、ただ頭でダンスをする、動くっていうだけじゃなくて、セリフを考えてダンスを乗せる、そういう部分が難しかったと思うんですけど、すごく勉強になった」


▲スタッフとして参加する真渕華圭(まぶちはなか)さん。舞台の音響を担当します。AYTFの理念を誰よりも理解し、体現しようとしているのは真渕さんでしょう。



――なるほど。一番経験のある真渕さんはどうですか? このチームで行くっていうことに関しては?

真渕「みんな仲良くて、私は楽しくやっています。初めての子もいるから、もうちょっとAYTFの理念とか、人とコラボすることに興味があるんやったら全然そういうことも助けてあげたいなっていう風に思うし、いつも(AYTFMの)クレア代表が言うのは、自分の国の現状を知るとか、他の国の現状を知るだけではダメやと、もう一つ何か作らないと、それをどうソリューションするのかっていうのをすごい聞かれるので、ありがたいことに天理大でもやっていけるから、今回作ったのをもう一回話して、ソリューションを自分で新しく作れたら素晴らしいかなと思います。ちゃんとチームになれているので、そういうことも話せるかな」


――今回はテーマが気候変動ですよね。そのテーマを聞いた時にみんなはどう思いました?

平松「去年参加している時の最後のディスカッションで、来年は気候変動ですよって言われて、これは難しいなって思ったんです。例えば、僕がカナダに留学していた時に、普通にペットボトルのリサイクルがどうこうとかいう話がどんどん出てくるんですけど、そういえば僕が学生時代にそんなディスカッションをしたことがない。日本であんまり教育として問題にしてないテーマなんで、これを日本人がどう取り上げるかというのは、ちょっと難しくなるかなって去年から予測していて、実際話し合ってすごい難しかった。すごい悩みました」

――平松さんと、他の人たちだと世代が少し違いますよね。今の現役の大学生世代の人たちは?

三嶋「私は舞踊専攻だったので踊りばっかりでした」

真渕「私は企業責任だと思っていて、異常気象とかはやりたかったんですけど、でもそれって周知の事実であって、企業責任があるっていう、それはあかんってなって、そこの先を作るっていうのが難しかった。今まで私たちがやってきたAYTFの作品って現状を伝える作品やったと思うんですけど、今回は未来の話を作ったので、それが大変やったなという風に思います」



▲演技にも初挑戦の畑有飛(はたゆうひ)さん。



――では、今みなさんが、今回の作品を通じて訴えたいと思っているメッセージってなんだろう?

畑「さっき(真渕)華さんも言われたんですけど、今回は未来のことをいずれこうなるんじゃないかっていう予想を踏まえて作品を作りました。で、そう予想したっていうことは、本当にそうなるかもしれないっていう思いだったんですけれど、本当に四季が無くなるとしたら、もしかしたら人が何か行動をすれば四季は無くならないんじゃないかとか、もしかしたら四季が消えて暑くなったとしても、人と人が手を取り合って対話とかしていったら、凶悪犯罪は起きないんじゃなかっていう、今最悪の状態を多分お見せしたと思うんですけど、こうならないようにというのを見ている人たちに語りかけているじゃないですけど、伝わったらいいなと思って演じました」

川﨑「私もなんか最近社会的に感じることがすごくあるんですけど、創作ダンスでも作品を作って行く段階で、今回の気候変動もそうですけど、最初は気候変動? ってところから始まって、その気候変動を通して知っていくニュースは沢山あって、京アニの事件を調べていた時に、秋葉原の通り魔事件を調べたりとか、作品を作って行く段階で社会のことを考えられるっていうのが本当に創作ダンスをしていても思うんです。で、顧問の先生が、最終的に作品を作り上げるのは観客の方やっておっしゃってくださってて、毎年大きい作品を一つ大学でも作るんですけど、自分たちはもう何カ月もかけて、これで行くって思った作品もやっぱり評価をされなかったりとか、そこはダンスも残酷だなぁって感じることはすごく自分の中であるんですけど、でも全員が全員そう思ってるわけじゃないと私は思うし、5人いて誰か一人でもこの作品に対して、少しでも何かを捉えてくださったら、私はすごく嬉しいなと思っています。今回の気候変動の作品もそうなんですけど、作品を観てくださる方が、この作品を観てどう捉えるか、その捉え方を通じてどう未来に発信していくか? 私は将来教員を選択したんですけど、教員をする上で生徒に自分やからこそ伝えられることを伝えたいなって本当に思っていて、たまたまお話をいただいて、教員という道に向かったんです。本当にこの舞台、この環境があったからこそ、伝えられることは本当に沢山あると思うので、それを私は生徒に伝えていければいいなって」



▲川﨑咲花(かわさきさくら)のソロパートはこの作品の見所のひとつ。



三嶋「まず自分が気候変動って聞いた時に、何それっていう? そんなこと考えたこともない。正直生きていてそんな環境問題とかそういうのをあんまり気にしたことがなくて、今までバレエとかダンスをしていました。そういう環境問題とか社会問題とか一切絡めてないので、踊りバレエとかはもうストーリーが決まっているものを踊ったりするので、それをまず一から考える、調べるところから始まるっていうのが、勉強になって自分自身も知ることがすごく多かった。それで四季が無くなる、夏が勝つってなったらもうハッピーエンドじゃないよねっていう話をみんなでしていて、これってハッピーエンドになる方法ってあるの? みたいな。でも結局、最後はひとりぼっちになっちゃったってなったんですけど、それをどこで巻き返せるんかっていったら、四季が乗っ取られる、夏が勝っていく前に私たちができることはないんだろうかっていうのをちょっと考えてほしいなっていうのは、すごい思ってて。結局夏が勝ったから、こういうことが起こってしまったという最悪の場面やから、そのもっと前の段階から、今でも日本では夏がほぼほぼ勝ってきてる状況にあるけど、そこを今どうやって止められるやろうみたいなことを、他の国では四季はこんなにはっきりないかもしれへんけど、そういうことをちょっとでも伝えられたらいいなっていうのは感じました」

平松「四季が夏だけになって、作品としてはどんどん医療が無くなっていったり、最悪の事態を作ってるわけなんですけども、伝えたいのは、日本の四季がどれだけ素晴らしいか、そしてそれをどれだけ残さないといけないかっていう意味で、最初のシーンをしっかり伝えないといけないのかな」



▲昨年のAYTFでは沢山の友達ができたという三嶋莞奈(みしまかんな)さん。今年も交流の輪が広がることでしょう。



――では、最後にAYTFへ行く、意気込みを語ってください。

平松「去年の失敗を活かす。去年は行く前から耳鳴りがしててとんでもない状況で行って、何とか乗り切って2週間声が出ずに、そこから仕事を辞めるまでいったわけですけど。それと去年から一歩進んだかどうかわからないですけど、(台)本も持たない。去年の悔しさを今年挽回したいなと思ってます」

畑「めっちゃ楽しみで、演劇も初挑戦で、しかもその演劇を日本じゃなくて海外でできるっていうのがすごい自分にとってもいい経験になると思ってますし、自分のダンスもTeamJAPANの作品も他の国の人に見ていただけるということで、このメンバーやし花預さんとか色んな方に見ていただいたんで自信を持っていけるかな。この作品を愛をもって持っていきます」

川﨑「私もめっちゃ楽しみで、久しぶりにこんな楽しみなことがある。(畑)有飛とは同じ部活なんですけど、来週やなって言ってて、本当に現実になることが不思議な感じがするんですけど、この練習期間も練習のこの空間も陽気で、負の雰囲気が流れてない。それを感じないほどのエネルギーと、ここの空間にいるだけで元気が出て来て、この空間にいられることが幸せでした。私は、(現地でやる)コラボレーションのメンバーにも選ばれていて、アーティストとしての責任を考えて来てくださいと言われてて」

真渕「アーティストとしての社会問題に対する責任を考えてきてくださいって言われてるんです」

――そんな宿題が出てるんですね。英語で。

川﨑「英語でするのは大変なんですけど、コミュニケーションをしっかり海外の方と取りながら、陽の雰囲気をあげて、日本文化をしっかり伝えていきたいです」

真渕「自分の課題と意気込みは、個人の問題は社会の問題やし、被害者は加害者やということをAYTFをやっていたら気づかされる。(去年発表した作品)アイソレーティッドも日本が戦争を敗戦して、その被害を受けたこととか、教育のこととかをやったんですけど、ちょっと外に出てみたら、マレーシアはうちらが一回占領してたとか、自分もなんかすごい思ってたなと思って、自分は被害者や被害者の国やっていう辛い事ばっかり考えてたんですけど、人の作品を観ることで違う、もう全然真反対から観れるっというのが、私が一番好きなところです。自分たちの作品をやって、他の国のを見て、また新しいみんなの意見を出したらいいなと思ってます」

三嶋「去年はずっと踊ってばっかりやったんで、今年は踊るのもそうなんですけど、演技をさせてもらって、自分でも新しい挑戦で、最初はできるんかな? セリフとか英語で日本語じゃないので、できんのかなって思ってたけど、何回かやってたらなんとなく形にはなってきて、踊りがすごくつながる部分とかもあって、自分の成長にもつながると思ったので、それをタイで披露するのがすごい楽しみです。あとは去年、すごいいっぱい、ほんまにいっぱい友達ができたんで、今年もいっぱい新しい友達を作りたいなって思います」






以上、2024年のAYTFに参加する五人のインタビューをお届けしました。

「アーティストとしての社会問題に対する責任を考えてください」、「自国と他国について知るだけでは不十分、その先のソリューションを考えろ」そんな課題が出るフェスティバルは日本ではまずお目にかからないのではないかと思います。日本だとプロのアーティストでも遭遇しない課題に取り組むことで、きっとこの五人は大きく成長することでしょう。


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